大量のリードが組織を壊す
現代のBtoBマーケティング(The Model型組織など)において、マーケティング部門はMQL(Marketing Qualified Lead:マーケティング活動によって創出された有望な見込み客)の獲得数をKPIとして追うことが常識となっています。
しかし、多くの企業で深刻な問題が起きています。ホワイトペーパーの大量生産や強引なウェビナー集客によってMQLの「数」は増加している一方で、インサイドセールス(IS)やフィールドセールス(FS)の受注率が反比例して低下し、営業現場が疲弊しているのです。マーケとセールスの間の分断(サイロ化)は、皮肉にもマーケティングツールの進化によって加速しました。
「質の低い大量のMQLは、組織の資産ではない。それは営業リソースを食いつぶす『負債』である。」
「獲得」から「純度」と「熱度」へ
我々のアプローチは、マーケティング部門の評価指標から単なる「MQL数」をパージ(排除)することから始まります。代わりに導入するのは、「SQL(Sales Qualified Lead)転換率」と「パイプライン・ベロシティ(案件化から受注までの速度)」を掛け合わせた複合的な指標です。
情報収集が目的の薄いリードを何件集めても評価されません。重要なのは、課題が顕在化しており、自社のソリューションに強い興味(熱度)を持った純度の高いリードをいかに精製するかです。
マーケティング戦略の抜本的転換
1. ゲーテッド・コンテンツの廃止(アンゲート化)
リード獲得目的で資料に個人情報入力を求めるのをやめ、実践的で有益なノウハウをオープンにする。これにより「本当に話を聞きたい層」だけが自発的に問い合わせる導線を作る。
2. ダークファネルの可視化と評価
MAツールでは計測できない、ユーザーコミュニティでの会話やSNSでの言及(ダークファネル)の重要性を認知し、そこに対する非定量的なアプローチをマーケティング活動に取り込む。
3. ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)への回帰
「面」で網を張る漁から、ターゲット企業(Tier1)をピンポイントで狙い撃ちする「銛(もり)」のアプローチへの転換。
組織の共通言語を取り戻す
指標を「数」から「質」へと転換した結果、初期段階ではマーケティング部門のリード獲得数は一時的に減少します。しかし、ISの架電・メールの有効応答率が改善し、FSの商談化率と受注率が上向くことで、最終的な「売上」の改善が期待できます。
何より大きな収穫は、マーケティングとセールスが「質の高い顧客とは何か」という共通言語を取り戻し、互いを敵対者ではなく協働者として再認識できる組織の自己治癒力が回復することです。